犬がいなくなったら〜野良犬篇〜

というわけで本日は、いつも公園で見かけた犬がいなくなってしまったことに端を発するAさんの小白奪回体験談のご紹介です。
野良犬がいなくなっても疑問に思わない方のほうが多いと思いますが、ほとんどの野良犬にはパトロンがついているものですので、いなくなるというのはよっぽどのことです。TNRをしている場合は、もともといた個体が消えることでその地区に別の個体が入ってくる可能性も高くなりますから事実関係の把握は無駄ではありません。

まず地域には愛心媽媽さんという、手弁当で野良動物にエサを与えたりして面倒をみている方がいらっしゃいます。もちろん野良動物の存在自体を毛嫌いする一部地域住民とは敵対する存在です。しかし愛心媽媽という名称があるほど、台湾社会ではおおむね好意的に受け止められているのも事実です。流浪動物保護団体がバックについてあれこれ手伝っている場合も多いです。気になる場合この方に犬の行方を聞いてみましょう。

Aさんの場合「小白は通報されて捕狗隊に捕まったと聞いたが捕狗隊はそんな狗捕まえてないと言うし、別の愛心媽媽が収容所に探しに行ったが居なかった」と愛心媽媽に言われ、ネットで情報を集めようと網の海を泳ぎました。個人的につてを頼る以外にだいたい行くのはこのへんです

そしてAさんは貓狗同樂會さんのフォーラム内に台北市動物之家每日收容公告があることを知りました。収容所に捕獲されたり持ち込まれたりして入所した動物がここで見られます。果たして小白は…

い、いたー。愛心媽媽さんが行ったという収容所は動物之家ではない別の公立収容所だったのです。小白は旧正月前に捕まっており、Aさんは日付を見て驚愕しました。入所からすでに20日が経過していたのです。動物之家は法定では14日、平均で20日が経過すると希望のない動物は殺処分されてしまいます。写真の小白はやばい目つきで、おまけに注意書きに「兇人(攻撃性がある)」とありました。やばすぎます。Aさんは携帯で画面の写真を取り、夕方の公園に愛心媽媽さんを探しに行き、翌日愛心媽媽さんと動物之家に行く約束を取り付けました。

翌日朝いちばんに動物之家事務所に電話をすると、ラッキーなことに小白はまだ生きて収容されていました。受付開始時間を待ってクルマを飛ばしました。引き取りには身分証が必要ですのでお忘れなく。

 動物之家

1ヶ月近くも収容されているので、多少角が取れて丸くなったかなという期待に反して、小白はやばい目つきのまま個室に入っていました。Aさんと愛心媽媽を見るとちょっと表情が変わり、アテンドしてくれたボランティア職員のおじさんも「あなたたちのことが分かるようですね」と言うほどでしたが再会を喜んではいませんでした。かわいそうに…

で、どうやってクルマに乗せるわけ?という段階になり、Aさんは首輪とリードを持参していたのですが、はっはっは、びびって小白に触れないのでした。というか、愛心媽媽さんでさえ小白に触ったことがないのでした。Aさんは小白に触ったことはありましたが、極限状態の野良犬がどんな反応をするか、手でも咬まれたら帰りの運転は誰がするのか、痛いのはいやだし、ふたりとも何度か接近を試み、なーんかだいじょうぶそうー、だったんですが、びびって手が出せずじまい。首輪さえ付けられれば引っ張ってクルマの後ろの空間に入れて固定できるんだけど…

イケメン獣医 「麻酔しますか」

 小白@麻酔

このサービス麻酔の効果は30分。愛心媽媽さんがご自分のお名前で引取りの手続きをし、麻酔が覚めるまでは愛心媽媽さんのおうちの庭に小白を置くことに。このように麻酔が覚めるまで・覚めてからのフォローもお忘れなく。公園など野外に放置するのは非常に危険です。うつらうつらした状態で寝てると思っていてもガブっと来ることもありますから、移動用に口輪も持参しました。

 小白復帰

愛心媽媽さんはべつの愛心媽媽さんとも話し合い、小白たちは彼女たちの目の黒いうちは愛心媽媽さんたちの庇護の下で暮らせるようなアレにアレしたそうです。なぜかというと彼女たちはアレでアレだからです。

というわけでおさらいです:

野良犬がいなくなったら(探したいときは)

  • 愛心媽媽さんに確認
  • 収容所のお知らせをチェック
  • 引き取りに必要なものをお忘れなく
  • あなたが飼い主かどうかは収容所にとってはどうでもいいことです(特に雑種)なのでビクビクしなくて大丈夫
  • でも引き取りに際してマイクロチップの移植が義務付けられています。同じ犬がつぎに捕獲された場合は飼い主としての責任を問われ罰金が生じます
  • またはあなたが犬の飼い主であることを知って悪意を持って陥れようとする人物がいないとも限りません(例:咬まれたと言って告訴&慰謝料請求など)
  • リスクなどの判断がつかない場合はATなど野良動物保護団体に知恵を借りてください
  • そしてあまりこういう件に関しては口外しないほうがいいでしょう
  • 台北動物之家は以前とは比べものにならないくらいキレイになっていましたが、郊外の公立収容所は衛生面や人道的な面で耐性のない方には厳しい環境であることが多いです。ロケーションも最悪です。とくに女性は決してひとりで行かないようにしてください

ところで収容所にいる動物たちはいつでも引取りOKです。気に入った子がいたらすぐに迎えに行ってあげて下さい。ただ名犬(純血種)になると人気が出ますのでくじ引きになることが多いそうです。ATのスタッフや幹部は「その特定の種類の犬を飼うことに適性があるかもわからない人物、しかも名犬だから欲しいなんて人物に、くじ引きなんかで動物の運命を決めるなんてバカげてる!」とお怒りです。それはもっともな言い分です。たとえばハスキーなんて犬初心者にはムリムリムリな犬でしょう、それを適当にくれてやってまた放棄されたり、正しい飼い方を知らずに日中留守の家で熱射病で殺したり湿気の多い台湾で皮膚病にさせてしまったり、動物が不幸になるのが目に見えています。でも今回ばかりはこの引き取り審査のゆるさのおかげで小白を取り戻せたわけで、Aさんは微妙な気持ちになったそうです。